売らせない。
この指輪は、これから先ずっと。
波音の薬指にあるものだから……
あ。結婚したら結婚指輪か。
腕の中に波音を閉じ込めたからか、そんな事を冷静に考えて笑みが零れた。
「……っ!」
波音の方は、いきなりの事でビクリと大袈裟に体が跳ねて。
顔だけこちらを向く。
「波音……悲しい思いをさせて悪かった」
やっと、久しぶりに見れた。
会えた。
どれだけ“会いたい”と思ったか。
記憶が戻る前の、波音が病院に来なくなって退院する前の俺が
記憶が戻って、ここまで、こうして波音を抱き締めるまでの俺が。
波音も俺に会いたいって思ってくれてた?
それとも、愛想尽かした?
会いたいと思っていた、俺の気持ちが伝われば良い。
会いたいと波音が思ってくれてたなら、その気持ちが俺に伝わって来て欲しい。
ギュッと力を強めて抱き締める。
「涙……?」
「何?」
「思い……出したの……?」
涙声で、目を涙でいっぱいにして、信じられないと言うように俺を見る波音。



