波音の背後に回っても、波音の視線はツリー。
全く気付かない。
―――「指輪、売っちゃえば良かった!」
何かを吹っ切ったかのように、呟いた波音。
それを真後ろで聞いている俺は……ちょっと、いやかなりショックなんですけど。
売るって。
俺、結構必死に選んだんですけど。
ポケットに入れていた、波音の指輪を握り締める。
そんな事を言いながらも、泣いている波音がただ意地を張ってるようにしか見えないから。
すっごく。
すっごく愛しいから。
「……ダメだよ。名前とメッセージ彫ってるから。買い取ってもらえない」
苦笑して、目の前の波音に腕を伸ばして引き寄せて、波音の耳元でそう言ってやった。



