そうだ。波音。



兄貴が、そう呼んでいた。




本城、波音。




……じゃあこれは、俺と本城さんの指輪……?




『R&H』



『涙&波音』





波音―――?





ふわっと脳裏に浮かび上がる様々な光景。



今まで分からなかった物が、一気に。




記憶の糸が繋がるのは意外にも早くて……




波音。




俺の彼女だ。


そしてこの指輪はエンゲージリング。





そしてあの分からなかったノートの赤いしるしは……





「雅臣!!」




全てを思い出した俺がすぐにやらなければいけない事なんて決まってる。




慌ててリビングへと戻れば、雅臣は勝手にテレビをザッピングしていて……




俺の大声に驚いたようにコチラを向き、でも口元だけは笑みを浮かべて。




「思い出したか」


「あぁ。……って鍵!車のキーどこ?」




ひどく落ち着いて冷静に聞いてくる雅臣とは反対に俺は焦る。




時計をみれば、約束の時間まで後30分も無い。