家を覚えていない俺の為に、兄貴は慣れるまで様子見も兼ねて俺の家に泊まってくれる事になった。



会社帰りの兄貴が病院に寄って俺と荷物を拾って帰る…と言う流れだった為、夕方になってしまった。



夕食は途中で適当に済まして来たし、後は寝るだけ。



一通り部屋を見回して深く息を吐き出して、座り込む。



持って帰ってきた紙袋の中から取り出すのは……手帳。


とうとう、明日が約束の日となってしまった。



誰か分からずじまいの。




「誰なんだよ……」



赤いしるしをなぞってみる。



待ちぼうけ、させてしまうとか、無いよね。



この寒い中、何時間も待たせたり……。




約束したのに来なくて悲しませる事になるか……。



悲しませる、顔。で、思い浮かんだのは、本城さんの悲しそうな顔。




……あれから、一回も来てくれなかった。


年末だし、仕事が忙しくて来る暇が無かったのか……


それとも俺、嫌われたかな。



明日も来てって言ったり、もう毎日来なくて良いって言ったり……ふざけてるよな。