「ほら、着替えその他」


「あ、ありがと兄貴」



部屋に一歩入れば、後ろから続いて入ってきた兄貴が紙袋を俺に押さえ付けてきた。


突っ立ってなくて早く中へ入れと言いたいんだろう。



それを受け取りながら、家に上がれば、兄貴はスタスタと先に歩いて行って窓を開ける。



俺が入院していた間、兄貴はちょくちょくここに来て掃除に来てくれてたみたいだ。



数週間不在だったにも関わらず見渡すかぎりでは埃は見つからない。





……ここに住んでたのか。



何年住んでたのか、毎日この家で過ごしていたはずなのに全く記憶が無い。



情けないけれど、兄貴に案内されるまで自分の部屋番号ですら分からなかった。



この家が俺の家、と言われても誰か他人の家に遊びに行ったような感覚だ。





「今日はもう遅ぇから、風呂入って寝るぞ。片付けは明日だ」



兄貴はそう言うとどこかの部屋……きっとあっちは風呂場なんだろう。



入っていった。