振り返って首を傾げるあたしに、涙はあたしを真っ直ぐ見つめながら口を開く。




「……手が冷たい。外、寒いみたいなんで、家に帰ったらすぐに暖まってくださいね?あと……気を付けて帰ってください」



涙の手は暖かい。




あたしの手も……握られた部分が熱くなっていく。




その手を、握り返したい。涙の手で暖めて欲しい。




そう思っていたけれど、涙の手はすぐにあたしの手から離れていった。




「ありがとう、じゃあ、また」



涙が触ってくれた手を握り締めて、優しく微笑む涙に見送られながら、あたしは病院を後にした。