フフ、と笑いながら俺に背を向けて花を整えだした本城さん。
「思い出せないから聞いてるんだけど」
どうしても教えてくれそうにない。
分かってるのに教えてくれない、
思い出したくても思い出せない苛立ちに、少し当たるように返してしまった。
「じゃあさ……」
俺の言葉に、花瓶を置き、クルっと振り返る。
そのままこっちに歩いてきて……椅子に座って俺と向き合った。
「もし、今城戸くんが思っている事と昔が違う時、城戸くんはどうするの?」
本城さんの顔に、笑みは無い。
真顔で、本当にどんな意図でこんな事を聞いてくるのか分からない。
答えに戸惑う俺を真っすぐに見据えたまま、本城さんは続ける。
「事故に遭う前の恋人を取るの?それともレイコさんを取るの?」
「ちょっと待って!別にレイコさんが好きとか誰も言ってないだろ?
毎日来てくれるからそうなのかなって思っただけで……。
取るとかそんなのじゃない」
どうしてそこまで話が勝手に進んで……。
ただ、何気なく聞いた事なのに本城さんの口からは俺が考えていなかった所まで進んでしまってる。