「ごめんね、どれにしようか迷っちゃって」



少しして、兄貴と一緒に戻ってきた本城さんは笑顔を作って帰ってきた。




……嘘だ。



迷ってたんじゃなくて、泣いてたんだろ?



バレバレ。

目、赤いし。




俺が頼んだんだけど、兄貴が慰めたのか……と思うと、悔しくなる。




俺には弱音を吐いてくれない気がするから。




俺にとっても本城さんとは会って数日みたいなものだし、


本城さんにとっても今の俺は昔の俺とは違う。




お互い、初対面みたいな関係で数日の仲のようなものだし、



そんな人間に簡単に弱音なんて吐けないよな……。




そう思えば、虚しい笑みがこぼれる。




せっかく1日中本城さんが来ていてくれたのに。




俺の中は虚しさと悔しさ。




そして思い出せない自分への怒りを鎮めるのに一生懸命だった。