「あんたこんな本に興味あんの?」



「あるわけねぇから!!弟のやつが紛れ込んだんじゃね!?あいつ年中部屋に入ってくるからさ!」



「聖の弟って四つ下でしょ。小学生がそんなの読む?」



「………。いや。お父さんのかな」



嘘を嘘で固めれば固めるなり、疑惑はバレバレになる。



犯罪者が問いただされた時、きっとこんな気持ちなんだろう。



こんな時にこそ神さま助けてくれ…



「薄情せい」



「あぁぁん。わかんない…わきゃないよ…ね」



真由の大きくない瞳が急激に見開き、気迫さえ感じてしまう言い回しにたじろぐ。



なんなんだ。このやたら上がり下がりのある展開は。



いい事が降ってきたと思いきや、真逆ってか。



それどころか、好きな女に手のひらでもてあそばれてる生まれたての子牛なんて最悪じゃね?



変な沈黙が二人の間を支配し、つい黙りを決め込んだ俺。



そんな俺に痺れをきらした真由は、負けずにしつこく食い下がる。



「これ、聖のでしょ?」



「…」



「隠し事すんの?」



「…」



「うちら友達だよね?聖はあたしの事信用出来ない?」



「信用はしてるけど…。友達ってのは…」



「真由は、聖の友達じゃないの?」



「……あたしは…」



そこから俺は言葉につまってしまい、自分の口から「友達」の文字は出てきてはくれなかった。



今ですら自分を偽り生きている俺は、女しか好きになれなくて、男なんか全然興味がなくて。



身は女なのに、男の心しか持ち合わせていない生き物だ。



誰かに期待し、真実を話した所で、気持ち悪がられるのは見え見えだとわかってる。



だけど、偽りたくない気持ちもある。



真由は友達なんかじゃない…



真由は、俺の好きな人…