あれから数分歩き、二人は留美にバレる事無く、無事に俺の自宅へと到着した。



「お邪魔します」と言う掛け声と共に勢いよく階段を駆け上がった真由は、部屋に着くなり開放感からか上に羽織っていた紺のブレザーを床に投げ捨て、先にズシッと腰を下ろした。



来客が急に来るなんて思ってなかったから、荒れ放題になっていた俺の部屋。



とても見れたもんじゃない。



ぶっちらけ、山積みになった雑誌と傷だらけのCD。



それに隠しきれてないエロ本が数冊ベッドの下から見事に「こんにちは」している。



表紙には股を広げたハレンチなお姉ちゃんに、エロい言葉のオンパレード。



「抜ける」「生」「イク」そんな言葉ばかり。



「うおっ!やべっ!!」そう思った俺は、真由に気付かれぬよう颯爽とベッドに近寄り、足を使ってエロ本を器用に中へおしこんだ。



ベッドのシーツをピンと伸ばすフリでフォローをかまし、焦りで起こった変な息切れがやたらする。



「聖」



「あっ、あい!?」



「何あたふたしてキョドってんの?」



背後から聞こえた真由の声に振り返ると、不審者を見るような真由の横目と言いまわしに、自然と俺の声は裏返る。



「どぅわれが(誰が)キョドッてるって!?つかキョドってなんかねえかんな!!はっ、意味わかんねえ!!」



「……。あのさ」



「なんだよ!」



「ほれ、変態」



そう言われたと同時に、真由を拠点に宙を舞い飛んできたのは一冊の本。



バサッという音と共に俺の肩から床に落下した。



そこに描かれている内容は、俗に言う縛り専門の変態御用立つ雑誌。



開かれたページには、胸を出したあられもない姿で手首を縛られた女が、ロウを背に浴び、気持ちよさげにに涙ぐんでいる。



ある意味、俺は逝った。



「あぁっ、っっあぁ」



たった今ピンチの極限に立たされた俺を表現するなら、生まれたての子牛とでも言うのだろうか。



膝がガクガクいって、いうことをきかない。



まさに生まれたてで、間違ってなんかいない。