あれから仲がよくなった三人は、休み時間になれば互いの教室を行き来し、学校が終われば当たり前のように外へとくり出した。



何気なく入った激安のカラオケ屋はいつの間にか行きつけの店になり、そこで三人は中学時代や好きな事、苦手な事など時間が許す限り語りつくした。



その中で、時を重ねれば重ねるなり見え隠れする真由の意外な一面。



見た目に反し頑固者だったり、口元に手を添え話す癖や、いつも前髪を気にして人差し指と親指で下に引っ張る癖など内だけじゃなく、彼女の動きも知る事ができた。



期待なんて一切してなかったはずの高校生活。



なのにその時間は真由を知り、真由を感じ、真由を思う日常が俺にとって一人幸せを見出だす時間になっていたんだ。



うっとおしいが人懐っこい留美と、愛しくて仕方ない真由により楽しいものに様変わりしていく生活に、心地よささえ感じてしまっている現実。



けど心地よさの反面、俺の中に間違いなく不満も生まれだしていたんだ。



真由の瞳にうつし出される聖という人間は「女」



「女友達」として真由は聖を必要としている。



そんな真由にイラつきを感じてしまう自分がいるんだ。



好きなら好きと真っ直ぐ伝えられるのが真の男。



とても素敵な事なのに、伝えてはいけない「好き」と言う言葉が俺の肩にのし掛かる。



関係が崩れて、何もかも失ってしまう「好き」という二文字。



俺は彼女に恋をしているのに。



俺は彼女を抱きしめたくなっているのに。



俺は



彼女に愛を伝えてはいけないんだ…