バクバクバクバク…


今まで聞いたことがないような心臓の音がする

きっと今日は頭と顔が洗えない

さっきまでの秋兄の香水の香りがして仕方ないんだもん…



「愛梨ぃーー!!」


甲高い真穂の声で現実に戻される

私…ドアの前から動けなかった


「「ヤバいヤバいっ!!」」


二人して手を取り合い跳びはねた


「あ、秋兄ヤバいっ!!」

「慶悟ヤバいってぇー!!」


二人とも何言ってるかわからなかった

でも、真穂も嬉しいことあったんだね


「あ…真穂?」

帰り道に、まだテンション高めな真穂にさっきの話をしちゃいそうになった


「ん?何?」

「えと…あっ!…月綺麗ぇー!!」


私は言うのを止めた

『黙ってたほうがいいから』


どこからか秋兄の声がしたような気がしたから


私は空に浮かぶ月を見て、ごまかした