漠然と研究をする事が好きだった学生時代だけれど、今は心持ちが違う気がする。
部内の誰もが日夜、試作品との戦いを地道に続け、そして見事に結果を出して。
ソレを先方から満足頂けたトキの達成感は、一度味わうと病みつきだもの…――
今ダークグレイの瞳をサンプル品へ一点に向け、至極丁寧に扱う貴方もでしょう…?
「うん…、これなら量産段階でも手間取らないだろう…」
コトリと軽い音を立てて、私が提出した報告書とサンプル品を淡々と眺める彼。
「そうですね、製品着色でクレームはありましたが…。
今回の件で、色選定をする際に簡単に考えていたと反省しました…」
私が今回依頼を受けていた製品は、今までに無い極小サイズのプラスチック成型。
そのせいで寸法ばかりに気を取られ、途中で先方と疎通が上手くいかない事もあって。
最後の最後で、着色クレームを頂いた時は珍しく落胆してしまったけれどね…。
「俺の自慢の係長さん?今回もお疲れ様――」
「…ッ、意地悪…!」
役員室へと伺う勤務中の身でありながら、彼の一言が発端でドキリと鼓動を高ぶらせた。
「もちろん…、真帆限定でね」
「もぉ・・・」
幾ら照れ隠しに返しても、修平の穏やかでいて綺麗な一笑と言葉には敵わない・・・

