父が愛知県出身というのに、殆ど名古屋の名所とはあまりご縁の無かった私。
本社に向かう前にした彼とのデートで、初めて連れて行って貰ったのだけれど。
熱田神宮の厳かさとともに、修平の大切な思い出が詰まった処と教えられたね・・・
「そっか…、コッチの方も安心しててよ?
ってヤバ…、それじゃあ行くね…!」
「うん、ありがと」
腕時計を一瞥して表情の変わった瑞穂とは、そうして久々のランチタイムを終えて。
同じく仕事に戻らなければならない私も、同じく急ぎ足で最寄駅へと向かった…。
今日は偶然な事に、瑞穂の研究施設に隣接する企業との打合せだった為に。
先週中に合間を見て連絡を取ったところ、運良く出張前の瑞穂をキャッチ出来た訳だ。
半ばムリヤリだったけれど、こうして瑞穂にアドバイスを貰えて本当に良かったと思う。
名古屋の中心部に位置する熱田神宮は、新緑の生い茂る自然豊かで厳かな場所――
アメリカ人の修平のお母さまは、日本文化を重んじてとても信仰深い方だけれど。
彼の歴史の詰まった思い出の地で結婚式を挙げたいと、随分な我が儘を告げた私に。
修平そっくりな笑顔を浮かべ、“ありがとう”と涙を流して喜んでくれたうえ。
“真帆ちゃんのお陰で修平が来てくれた”なんて、滅相も無い事を言われたけれど。
本当に私のお陰でなく、名古屋には彼の歴史が沢山詰まっていて切り離せる訳ない…。

