気の置けない友人だからこそ、会えたら留め切れないモノを吐き出したくなる。
だけれどソレに機密事項の仕事が絡んでいるとなれば、言葉を呑んでしまうから。
こういう時に社会人としての責任を考える自分は、イイ大人だと自覚させられた…。
「確かにそうだけど…」
「真帆の今の顔…、黒岩さんが見たら悲しむわよ?」
「・・・え?」
曖昧に返した私を窘める一言を発して、デザートの杏仁豆腐に手を伸ばす瑞穂。
「やっと幸せ掴めたクセに、なに浮かない顔してんのよ」
「浮かない顔、してる…?」
真っ白でぷるぷるなソレをスプーンで掬い、こちらを捉えて呆れた表情を見せるから。
「昔からの自覚ナシ加減も、ココまで来たのか…」
「失礼ね、もう…!」
「付け加えると、無鉄砲なクセに意外と心配症だしね?」
何となく悔しさが勝った私はいつものように憤慨し、頬が自然と膨らんでいく…。
「とにかく…、アンタは隠してるつもりでも顔に表れてるの。
“何事も当たって砕けろ!ソレが出来なきゃ女が廃る”わよ?」
ふと視線を逸らして、絶品の杏仁豆腐を食しながら何時かの名言を呟いた彼女。
ソレは今の悶々とする私の脳内に、パッと一粒の電球を灯してくれたようだから。
「うん、ありがと…」
大学時代は四六時中一緒にいて、ソレこそ知らない事が無いくらいの密度だった。
そして同じように社会に出て戦う現在は、少し離れたこの距離感も心地が良いね…――

