力強さと爽やかな香りに包まれて、堰を切ったように零れていく涙。



ソレに構う事なく、引き寄せてくれた彼の腕をギュッと掴んでしまう…。




「正直に言ってくれ…真帆、大神と何があった?

さっきの会議の時もだが、明らかに変だったぞ」


「っ、な、にも…」


そのまま身を包まれながら、唐突に尋ねられたせいで不自然な返答となった。




会議中は画面に注視していた彼が、まさか私の態度に気づいていたなんて。



こんな状態で聞かれて、動揺しないでいられるワケ無いよ・・・




「それなら松岡が言った、“大神さんは要注意”は何だろうな…。

大神と遣り合って来たアイツが、態々忠告してくる謂われも無い――

すなわち俺の大事な真帆のコト以外、何がある…?」


答えを促しているようでいて、既に結論を出している修平の言葉。




「ひっ…、く…、ちが…」


アレは仕事上の事だから、どうしても上司の彼には弱音を吐きたくなくて。



霞んだ視界も構わずに、フルフルと頭を振って否定しようとしたのに。



不意に抱き締められていた力が弱まり、チェアごとクルリと翻された私の身体。




「そんなに俺が信用出来ない?」


「しゅ…、へい…、やだ…」


ぼんやり映る彼の表情を捉えてしまい、もう我慢の限界に達したから。



椅子から立ち上がって、厚いその胸にギュッと抱きついて泣いてしまったの…。