いつもならばダークグレイの瞳を見るだけで、ドキドキしてしまうのに。
「吉川さん…?」
返事をしなかったせいか、こちらを窺う彼に再度呼び直されてしまって。
ハッと我に返った私は慌てて頷くと、何処か不機嫌に見える修平の顔を見上げた。
「あ、は、はい…!
5分ほどで話を終えますので、直ちにお伺い…」
「“至急”だと、俺は言った筈だが――」
「っ、すみません…――」
何よりも部下を優先する彼には珍しく、ソレすら寸断させる声色に息を呑んだ。
今日ばかりは、何故か彼の表情が怯えたくなるほど冷たいモノに映ってしまう…。
「すぐに大丈夫だよな…?」
肩に置かれたままの手に、少しだけ力が増したような気がするから。
「…はい・・・岩田くん、ごめんね?」
上司にNOを突きつけられる訳も無く頷けば、岩田くんに断わりを入れて席を立つ。
「いえっ、気にしてないで下さい!」
「ごめんね・・・」
その間にもスタスタと歩き始めた彼を追うため、パンプスがコツコツと音を立てた…――
経過時間から察するに、きっと取締役会を終えたばかりの頃合いでしょう?
一体どうしたのよ修平…、何で怒ってるの…――?