進歩するには変化と苦難が付き物であり、平穏など夢のまた夢…。
試作部で会得しながら学んだ、全く上手くいかない新製品研究と開発の日々。
私なりに誇りを持って、部員と力を合わせて結果を出して来た自負もある。
だけれど大神チーフからすれば、ただの戯れ言でしか無かったのかな…――
『こんな案件に、何時まで時間割いてんの?
本社のウリは"TIME IS MONEY”なんだからさぁ。
殊更ね、スピード勝負なんだけどなー』
『僭越ながら…、丁寧かつ慎重に行うのも…』
本社から直々の依頼品については、余程の事が無い限りメールが通信手段だ。
なのに今回はメールでのやり取りではなく、何故かチーフと電話する羽目となる。
フランクながら棘のある口調に、ムッと来て言い返そうとしたのに・・・
『アチャー、そんなの“当たり前の事”でしょ?
試作部に課せられてるのは研究成功であって、ソレは至極当然だ。
成功とは即ち、要求された事項には100%で返すコト・・・
目まぐるしい競争社会で、そんなにのんびり構えてて大丈夫?
どうやら日本支社では、“ソレ”が定着しちゃってるみたいだねぇ』
あーあ…と、明らかに呆れているような声色が電話から伝わってきて。
『…申し訳、ありません…』
受話器を握る手に悔しさと恥ずかしさで思わず、キュッと力を入れて。
日本支社全体まで馬鹿にされたというのに、私は謝罪しか出来なかった・・・

