エリートな貴方との軌跡



修平とモニター越しに交わされるやり取りを、ただ不安げに一瞥する。



逃げたくなってもソレが許されない立場は、此処に留まる唯一の理由で。



なるべく視線が合わないようにと、会議資料へ視線を落としていた…。




「ところでさぁ、ソッチの原料調達ってどうしてる?」


「あぁ、取引業者から相見積りが大半だな…」


軽い口調で尋ねるチーフに、修平は松岡さんと顔を見合わせつつ答えた。




「えー、ワザワザ国内業者を通すのかよ・・・

コッチに言えば、簡単に1,2割のコストダウンだろ?」


「確かに、大神の言う通りだが・・・

金額云々の他に、慣例や付き合いを重んじる部分もあるしな…」


日本には恩義という言葉の通りに、ソレも致し方の無い事だと修平が重ねると。




「あー残念…、そんな戯言聞きたくねぇなー」


「・・・ッ」


荒立てられた声色の変化に驚き、思わずビクリと肩を揺らしてしまった。




「…真帆ちゃん?」


私の態度を明らかに不審がっていた松岡さんが、とうとう様子を窺ってきて。




「あ、す、すみません…」


笑ってスマイルキラーを見る筈だったのに、頬をツーと何かが流れていた・・・