エリートな貴方との軌跡



私のミスではなくても、トラブルを引き起こす環境を作り上げたのは私で。



今回は特に、トラブル回避をする配慮が足りなかったんだ・・・




「ハイハイ、もう謝罪は不要!」


頭を下げ続ける私たちに、ハハッと笑って空気を一掃するスマイルキラー。



その笑いにつられるように、全員がゆっくりと上体を起して彼を見上げた…。




「松岡さん・・・」


岩田くんは腑に落ちないのか、何か言いたげに彼を見ているけれど。



「んー、先方の意向を汲んでやった結果だろう?

N社の担当者も異動したばかりで、よく勝手が分からなかったらしいし。

お互いに少しばかり、コミュニケーション不足だったかもなぁ…」


ソレを制してニヤリと言いのけてしまう彼は、やはり試作部のエースだね。




もちろん松岡さんは、ケアレスミスに対しては厳しく叱咤するけれど。



今回のような場合は“芽を潰さない”言い方で、過程を認めてくれる。



表情を巧みに使い分ける、スマイルキラーはやはり凄い…――




「はい、真摯に受け止めて今後気をつけて参ります。

ありがとうございました」


管理職の私としてはソレこそ堪えるけれど…、次こそ頑張ろうって思えるの。




彼の求めているモノは、過去への謝罪ではなく次への改善点を理解する事だから。



黒岩 修平のスタンスを受け継ぐ、彼の仕事ぶりにまた触発されたね・・・