松岡さんはこんな時、いつでも窓口を開放して受け入れてくれるから。
一人っ子の私には本当の兄のような存在で、温かく見守ってくれたから…。
どうしても頼りたい衝動が抑えられずに、つい甘えようとしてしまう私。
自分で解決しなきゃいけないのに…、もう自己嫌悪だよ・・・
「…それが……」
だとしても抑え込んでいたモノを止めきれず、ソレを紡ぎ始めた時。
「あー、松岡さん良かった…!
お取り込み中すみません、N社の件で不具合発生です!」
バタバタと、慌しい駆け足とともに隣席の主である、部下の岩田くんがやって来た。
「…トラブルの詳細は?」
私から彼へと視線を変えれば、一気に引き締まった表情になる松岡さん。
その言葉を受けて、私もまた彼の方を向いてバッサリと意識を切り替えた。
「はい…、先方から材質変更の指示を受けたのですが・・・
指示通りに提示したサンプルを、量産の段階前に差し戻すと仰られまして…」
ガックリと肩を落として、顔を強張らせて状況説明をしているけれど。
この岩田くん、またの名を“試作部のトラブル・プリンス”らしい。
可哀想な代名詞だと思いながらも、私と松岡さんが納得したのもまた事実。
可愛い容姿ながら、トラブルの陰に彼アリと言わしめる子だからだ…――

