それぞれのマグカップを手に持ちながら、惰性でデスクへ戻って行くと。
到着を待ち侘びたように立ち上がって、ひとつのカップを受け取る松岡さん。
「あー、やっぱり真帆ちゃんのは最高ー」
「はいはい…、ありがとうございます」
芳しい香りを放つコーヒーを飲めば、ソレだけで上機嫌になる不思議な彼だ。
「良いよなぁ、美女との朝のコーヒータイム…」
「…お世辞を言っても、あとは何も出ませんから」
「えー、嘘じゃないよ？」
クスクス楽しそうに笑う姿に、過去はどれ程の女性を泣かせたのかな…？
この人の楽しみドコロが、未だに解らない…――
「…ところで、今日のWEB会議の事で・・・」
このままでは堂々巡りになるコト必至なので、コホンと咳払いをした私。
「あぁ、何にも問題無いだろ」
カップを傾けてコーヒーを飲みながらも、途端に眼つきを変えた松岡さん。
些細な違いだけど、まさにコレが彼のスイッチONした合図になる…。
「でも…、気になる事があるんです…」
胸に痞えている思いが言葉を詰まらせていると、そんな私をジッと捉える彼。
「大神チーフのコトか？」
あぁ、やっぱりスマイルキラーはお見通しなのね・・・
