チェアを此方に向けて、左方から何かを企んでいるような顔つきで見てきて。
何かを返そうとしても敵う訳も無い私は、ハァ…と溜め息をつくのみだ…。
「真帆ちゃん、その顔ソソるぅ」
「今さらお世辞言ってもダメですよ。
コーヒーならご自分でどうぞ!」
寝不足続きでファンデのノリも最悪なのに、ソソる顔な訳が無いでしょう。
私のコーヒーが美味しいって褒めてくれるけど、今日は淹れないもん…!
軽すぎる一言で呆気に取られつつ、彼の方からPC画面へと視線を戻したのに。
「えー、お世辞じゃないって。
ほら“課外学習のアト”はホルモ…」
「わー!!」
職場に似つかわしくない発言を遮ろうと、デスクを叩きながら声を上げた私。
必然的に交わる視線に臆する事なく、どうにか攻撃を封じる事が出来たけど。
構造課が奥に面した位置にあっても、これほど騒げば周りの視線を集めるハメになる。
静まり返った中で向けられる視線は痛くて、居た堪れない事極まりない…。
「あーあ、相当疲れてるようだな・・・
ほらほら、コーヒー飲んでリフレッシュしようか」
「・・・はい」
この勝負は今日も彼に、軍配が上がってしまったようで…――
引き攣り笑いを浮かべつつ、給湯室へとコーヒーを淹れに向かった。

