メイクを終えて着替えると、最後に大好きなフレグランスを足首にヒト吹きした。



高い位置につける分だけ香り立つので、私は低い位置で纏うようにしている。



ビジネスシーンでは特に、フレグランスが苦手な人の迷惑にもなるし・・・




「ごめんね!」


ガチャリと開いたドアの先には、リビング内のソファで新聞を読む彼を捉えた。




「いや…、急いだ割には完璧じゃん」


「もう、お世辞はイイの!

時間ギリギリだから、早く行こう?」


いくら慣れたとは言え、ダークグレイの瞳で見つめられれば気恥ずかしくて。



仕事モードからトリップした心を隠すように、緩みかけた口元を窄めた私。




「フッ…、はいはい。

真帆ちゃんは恥ずかしがり屋だしー?」


そんな考えなんてお見通しらしく、一笑しつつ新聞を片す修平。



「知らないっ…!」


上手く返せずにプイッと背を向ければ、ハハハッと豪快に笑われてしまうから。



些細な事でも打ち負かされては、始末に終えない…――




「さてと、行くか――」


「うん!」


今日はミディアムグレイのスーツに、冬らしいブラウンのネクタイを締めている。



玄関の施錠を終えた私は駐車場まで、そんな彼の腕に縋りながら仕事へ向かった・・・