すでにアルコールで朱を帯びている頬の熱はまたアップ。伝えたい言葉は息に呑まれた。



すると私を向き直らせた修平は、そのままギュッと広くてあたたかい胸の中へと沈める。



「これからも仕事では辛い思いや寂しい思いをさせると思う。それは俺が責務と真帆の上司である限りは変わらない、…ごめんな」


最後の謝罪を絞り出すように言った彼。ふるふると胸の中で頭を振ることに精一杯の私。



「――でも忘れないで欲しい。

俺が一番の真帆の味方であることも。真帆を守るためなら全力で立ち向かうことも…。

これからはずっと歩みながら、一緒に笑って、一緒に幸せだって思える家庭を2人で作ってくれる?」


「あっ、たりまえだよ!…わ、たし…い、いまだって、し、幸せすぎるのに…。

しゅ、へい…あ、甘やかしすぎなの…っ」


どれだけこの人は、私のことを喜ばせてくれるのだろう?堪え切れずに涙が頬を伝った。


「だって俺、真帆バカだし?」


「もー…」


そのフレーズを言われると、私が泣き笑いに変化することをよく知っている優しい修平。



まだ離れがたくて彼の胸へ身を預けていると、さらさら髪を撫でる指の感触が心地良い。



「もう明後日には帰るけど、…また来よう?――今度はプライベートで」


「…約束してくれる?」


最後に加えられた言葉に私が思わず顔を上げると、綺麗な笑顔を見せて頷いてくれる彼。


「それにはミッションが必要だけど、」


「えっ!?」


「“今夜は眠らせない”って言っただろう?」


“それが真帆に課せられた重要ミッション”と告げ、唇に軽く触れるキスが降って来た。



もうすぐ誰よりも大切な彼と結婚する私。まだ仕事と家庭の選択をするのは先のこと…。




 【エリートな貴方との軌跡★終】