2人してソチラへ目を向ければ、穏やかな表情で私たちを見据えているCEOであった。
「CEO、悪ふざけがすぎますよ?――真帆は俺の大切な人と、何度も言ったでしょう?」
「ほぉー…シュウは、愛情が重すぎるって逃げられないようにな」
「…可能性がゼロ、とは言えないからそれは困りますよ」
「もちろん、私もフリーってことは忘れないでくれ」
「CEO!」
対峙するCEOといえば、フフッと小さく笑ってどこか状況を楽しんでいるように映る。
いつもは毅然としている彼が時おり見せる、焦りの色は私を幸福感に満ちさせてくれる。
その中でどこからともなく響いた“乾杯ー!”の音頭に、誰もが自然とグラスを掲げた。
そのあとで“おめでとう”を加えられるという、不思議なパーティーにやはり笑った…。
腰に手を置いて引き寄せられ、修平の隣に立った時に常々思う。この人に出会えたこと。
エリート集団と呼ばれる彼らと実際に接触してみて、その中で修平が慕われている理由。
何かで衝突してもソレはソレ。別の事へ話が及べば、すぐに切り替わる姿は拍手モノで。
それは互いがライバルながら、チームを重んじる彼の姿勢に共感してのことだと分かる。
日本でも此処でも変わらない彼だからこそ、エリートと謳われるのだろうと気づいたの。
「一緒に来る事が出来て、…本当に良かった。ありがとう」
賑わう会場の中心で修平の広い胸へと寄り添い、流れる曲にのせてのダンスをする時間。
今だけではなく仕事面でも日本では滅多に味わえない機会、そして人に巡り合えたから。
ポツリ紡いでいた言葉も、フッと小さく笑う彼の声色が会場内の調べにのった気がする。
「まだ、その言葉を貰うのは早いかもね」
「…どういうこと?」
“今度は俺がサプライズする番だよ”と、楽しそうに耳打ちするから首を傾げるばかり。

