とりあえず整理すると。CEOの息子がジョシュアであって、チーフが彼のお目付け役。
そして修平が本社勤務だった時の功績により、ジョシュアのプライドは大きく傷ついた。
「真帆ちゃんごめんねー、今まで黙ってて。
ほら、修ちゃんも言わなかったみたいだし?俺も倣った方が良いかなーと」
CEOをここぞとばかりに甚振ったらしいチーフは、次に私へ謝罪をしてくれたけれど。
「オマエ、…人をダシにして」
“それはホントだけどね”と言うチーフに、修平はまたいつものように溜め息を吐いた。
となれば優勢であるのはチーフ。向き直った私は改めて、そんな彼に無表情で対峙する。
「…要するに私は最初から、“あて馬”だったのですね?」
「ん?それは違うよ」
「どういう意味でしょう?」
「真帆、」
ただ一度、修平の落ち着いた声音が鼓膜を揺らしたものの、今は耳を傾けられなかった。
ふつふつと沸いた怒りゆえか、チーフに対しての口調は仕事モードに切り替わっていた。
もちろん仕事に関しての不条理なんて山ほどある。ただ、今回の件はそれを逸している。
すべてを損得勘定で動いている訳ではないけれど、苦悩に満ちた時間が仕組まれていた。
そんな事実をサラリと流すような態度で告げられるのは、さすがに私の気が収まらない。
これまで傍観者であったリリィやジェンが私を呼んで宥めているが、それとは話が別だ。
ブラックスーツを纏っているチーフ。何時もの南国ムードとほど遠い、クールさを持つ。
彼は私が向ける視線をまったく逸らす気配がなくて、ただジッと冷静に見据えるだけだ。
チーフの柔和な表情の奥に隠れた部分を引き出すのは、力不足と知っていても引けない。
「…大神、」
私とチーフが放つ、どこかピリリとした均衡を破ったのは、彼の名を呼んだ修平だった。

