ブラックでゴシック調のデザインが可愛いそれは、日本でもお馴染みのアナスイのお品。
有無を言わさずの強引さに圧されて受け取ると、小さな鏡に映った自分の顔を見つめる。
「…リップが、取れてない」
ぽつりと呟いたあとも、まじまじと彼女が行ったリップメイクを見ながら感動していた。
シアーなクリニークの口紅より、どうやら先に何度も塗ったベネフィットのお陰らしい。
何故だかもともと唇の赤い人に見える。そして僅かに残ったラメ感もまた自然で綺麗だ。
「でしょう?クリニークだけだと頼りないけど、ホントはもっと激しくってもOkayよ。
どれくらいで落ちるのか、私ひそかに楽しみにしていたんだけどねぇ」
「あら、私を見れば一目瞭然よ。まだ健在じゃない?」
「それはそうだけど。アナタたちは見慣れてるもん」
「なにそれぇー」
「真帆ちゃん、ジェンから此処の家のコトは聞いた?」
ここでも元気な2人に苦笑していれば、ずっと静観していたらしいチーフに尋ねられる。
「…いえ」
「やっぱりね。で、修ちゃんは言う訳ないよねぇ」
その問い掛けで真意を探れる筈もなく、弧を描いてひとり笑っているチーフには困惑だ。
「――此処はもちろん知らなかったよ。俺はさっき聞いたけどね」
「どういう意味?」
視線を移して修平の表情を窺えば、彼もまたチーフと同じく納得出来る返答をくれない。
「さすがに真帆ちゃんも気づいてたと思うけどね。
つまりは此処ってレストランじゃなくて。とあるベイビーちゃんのお宅なの」
「べ、い?…あ、」
するとアッサリ答えへと導いて下さったのはチーフ。まるで私の予想とかけ離れていた。
「そうそう。ジョシュちゃんの家ってワケ」
「…ジョシュアって、セレブなんですか?」
「んーまあ、そうだねぇ?」
ニヤニヤと笑いながら肯定の意を示したチーフが、私の傍らに居る修平へと視線を移す。

