エリートな貴方との軌跡



“だから日本人って、奥ゆかしいのねぇ”と、リリィが放った一言がそれを決定づけた。



その耳慣れないフレーズに今度は、どういう意味かと言い始めた彼らによって一段落だ。



“ごめんね”と小さく言って、ようやく大きな手が外れたのはその直後のことであった。



すかさず彼のスーツの袖を引っ張ると、ダークグレイの瞳は相変わらずクールに笑った。


「あんなデタラメ言うなんて、」

「リリィに感謝だよ。上手くまとまったもん」

「…こうなるコト、分かってたクセに」

「そう?」

「いま凄く意地悪な顔してるわよ」


賑わしさが多少落ち着きをみせた周囲の中、もちろん日本語に小声での会話をしている。



ポツポツ小言を言う私だけれど、衆人環視の状況下での濃厚キス回避はホッとしていた。



すると今度は腰から肩へと腕を回されて、屈んだ彼と私の距離がまたしても近くなった。


「真帆ちゃんのエロい顔は、俺だけのスペシャルだもん」

「また言う、」

「本心なのに?」

「…知らない!」


クスクスと笑っているクセに、当の彼が発する言葉と声音がセクシーすぎて未だに困る。



ぷいと顔を背いて明後日の方角を見てもなお、修平は楽しそうに視線を向けて来るのだ。



すると耳に熱い吐息を感じ、キスをされた。かと言って、私も易々と引く性格ではない。


「ちょっとシュウ!宗教を盾に使うなんてズルイわ」

「本当よね。せっかくマホに、“男をオトしても落ちないメイク”を施したのに!」

「リリィだめよ、それだと怒りかねないわ。“シュウ専用”のサブタイトルは必須」

「あ、そうだったわ」


ねえ?と顔を見合わせている2人とは、ブツブツと不満を漏らしているジェンとリリィ。



そんな裏タイトルがあったのか、と顔を引きつらせてしまったのはソレを施された私だ。



「ほら見てみなさいよ」その言葉とともに、リリィはコンパクト・ミラーを差し出した。