瞬時のことでポカンとしていた私を映すダークグレイの瞳は、イタズラな色にも見える。
その間に素早く、顎先を引き上げられた。“ウソでしょ?”と口をパクパクしたものの。
「お膳立てに感謝しないと、ね」
アッサリと牽制を笑顔でかわした彼。そしてグッと近づいた距離に、息を呑む外なくて。
私は口笛や囃し立てる声を避けるように、ただ目をギュッと固く瞑って彼に委ねた刹那。
軽く唇へチュッとリップノイズの立つキスを落とされる。が、その後がなくて目を開く。
周囲が不満と悲鳴が共鳴する中で、目を瞬かせた私の片頬をそっと包んでいるのは修平。
「シュウ!続きはー!?」
「あれじゃあ、ただの挨拶だろ!」
お国柄ご尤もな意見の往来に触れてもなお、彼の綺麗な微笑は崩れず私を離しもしない。
「悪いけど――熱い誓いのキスは、仏前で挙げる慣わしなんだ」
「・・・え?」
もちろんこの発言に間抜けな声を出したのは私。だが、彼の手が直ぐに口元へと移った。
大きな手で口を押さえられたために眼で彼へ訴えるけれど、どうやら今はその効力ゼロ。
「日本はシャイな人種だろう?まあ全員がすべてそうとは言わないけどさ。
その性格も手伝って、神前結婚式ではその時に初めて誓いのキスをかわすんだよ。
だから悪いけど、此処で真帆との誓いのキスは見せられないんだ」
一番大きく騒ぎ立てていた人たちへと向かって、真顔で神前式について語り始めた修平。
白無垢に身を包んだ女性と厳かな中で愛を誓う――これは正しくても、冒頭は大間違い。
そんな慣わし聞いた事ないよ!と言いたいのに。封じられた口から漏れるのは吐息だけ。
あたふたする間にも、敬虔なクリスチャンが多勢の彼らは“なるほど”と納得している。
そのため傍らに居るチーフへ視線を送ってみると、何と肩を小さく揺らして笑っていた。
紛れもなくこの状況を楽しんでいたチーフ。アジア系の人がいないゆえに成立している。

