けれども大神チーフには既に、惚気た場面を聞かれてしまっているかと諦め心が湧いた。
だというのにチーフは、日本語に首を傾げる彼女たちへご親切に通訳してしまったのだ。
「…やってらんないわ」
大袈裟な落胆の声と共に様々な色の視線が一斉に向き、ハハ…と乾いた笑いを浮かべた。
「でもさぁ――シュウちゃんって中身は面倒な男だから」
「ええ、それはよーく分かった!マホに会って余計に思ったわ」
スペイン女性の肩を叩くチーフの発言に頷いた彼女は、また私へと焦点を合わせて来る。
「この男の隣はマホ以外ムリってね」
「おー男らしい」
「ちょっとリィ、私は女よ!」
「細かいなぁ」
「…良いトコロ全部、大神に持って行かれたな」
「でも、“修ちゃん”の話なんだけど」
「真帆バカなだけの男の?」
「私は修平バカだけどね」
“やっぱりお互いさまだ”と耳元で言われると、ダークグレイの瞳へイタズラに笑った。
「はいそこー、勝手に盛り上がんないの」
「…何もしてないだろ」
「修ちゃんはエロエロ光線出しすぎなの」
「え、エロ…、あはは!」
野次を飛ばすように乱入して来たチーフは、“ほらね”と修平に対してなぜだか得意気。
「ちょっとリィ!早く通訳してよ!」
彼をなおも攻撃するチーフのスーツをお構いなしで引っ張るのは、どこか苛立つジェン。
「やっぱりジェンさんご乱心?」
「当たり前でしょ!大体、早く始めてよ!」
グリーンの瞳はチーフを捉えている。どうやら日本語での会話に疎外感を覚えたようだ。
それは異国で母国語に安心感を覚える私たちと同じで、理解出来ないジレンマだと思う。
申し訳なかったな、と感じた瞬間。目の前で起こった光景が、ソレを見事に忘却させる。

