エリートな貴方との軌跡



それまでの声色と打って変わり、嫉妬混じりの視線が集団で向けられるとさすがに怖い。



傍らに居てくれたリリィが窘めると少しは和らいだ気がするけれど、そのパワーは健在。



「シュウにモーション掛けた時、同じセリフが返って来たの」


スペイン系の美女が発した言葉に、首を捻るべきか迷いながらその女性に視線を合わす。



「シュウ…、ひとりで来たっていうことは――フリーなの?」


「日本に居るよ。今後は彼女次第だけどね」とか言われれば、オトす気も上がるでしょ?



ギロリと鋭い眼差しで圧され気味の私は、はぁ…とどうにか間の抜けた声で頷いていた。



「それならアタシ。シュウが欲しいわ」って、大抵の女は一気にモーションかけるのよ。



“そこで彼、何て言ったと思う?”という問い掛けは、さすがに難問で苦笑に留めた私。



「折角だけど、俺の心は仕事とマホにしか置いてないから」」


すると集団から合わせたように返ってきた答えに、思わず目を丸くしたのも無理はない。


「あまりにサラッとかわすからアタシ、マホって何よ?って聞いたのよ」


確かに“真帆”という名前は、海外からみると一般的ではない。そのお尋ねにも納得だ。



“そうしたらシュウってば、何て返したと思う!?”と、さらにヒートアップした彼女。




「――俺にとって真帆はこの世でもっとも愛しい女性で、日々を大切に生きている証」


「…へ?」


甲高いスペイン女性の声よりも早く、大好きな声音が発した日本語に驚いて振り返った。


「だって本当だもん」


すると背後にはジェンとチーフとともに、瞬きする私をイタズラに微笑している修平が。


「良いの?真帆ちゃんと仕事のことしか考えられないツマンナイ男だよ?」


「…私こそ、もう返品不可だからね」


日本語を理解しているのは私たち以外には、この場では1人。それだけでも恥ずかしい。