訪れる前に本社の人々に対して苦手意識を持っていたことを、今ひどく謝りたくなった。
それは自分が外聞と勝手な印象だけに捉われていただけ。本当の彼らはひどく優しくて。
本社であろうが何処でいようが変わらない。それに囚われていたことが恥ずかしかった。
幼い考えの抜け切らなかった私でさえ、彼らは“変わらず”迎え入れてくれたのだから。
「あれ?修平たちは?」
ひと通りメンバーとハグを終えたところで、やっぱり勝手に視線が彼を探してしまった。
「やだ、何で男の方がまだ来てないのよ」
「ジェン、呼んで来たら?」
「ええ、見当つけて行って来るわ」
ひとつ溜め息を吐き出したジェンは、ハイヒールでも構わず速足で会場を抜けて行った。
私はリリィたち数名に囲まれながら空いていた席へ着くと、改めて全体を見渡してみる。
そしてクリスタルの輝かしいシャンデリアが室内を照らす中で、メンバーに混じり談笑。
「本当はわたし、シュウ狙ってたんだけどねぇ」
「あっ、私だってそうよ。彼がココに来た時、あんなイイ男初めてだったもの!」
「オマエらデリカシーがねえなぁ。誰のパーティーと思ってんだよ、」
「あ、私なら平気よ。修平がモテるのは日常茶飯事だから」
男性社員が私の様子を窺いながら宥めてくれるけれど、ふふっと微笑みつつ頭を振った。
今までずっと騒がれていたし、彼と2人で歩いていて女性の視線を感じることも慣れた。
ただ彼を待たせると決まって、女性から声を掛けられるところに遭遇するのは気まずい。
嫉妬しない、と言えば嘘になるけれど。今となっては、幾つになっても騒がれて欲しい。
そんな余裕を持てるようになれたのはきっと、指輪と彼の変わらない態度のお陰かな…?
「悔しいけどね、…教えてあげるわ」
「な、何!?」
すると騒いでいた女性社員は一様に肩を落とし、コチラへ鋭い視線を向けるから驚いた。

