ようやく満足したと言って、ケープを取ってくれた彼女たちに“ありがとう”と告げた。
しかし、それは未だ早いとの返事。首を捻りながら、また2人に腕を引かれて退出する。
その途中で視界に入る絵画や置き物は、ロンドンの頃にセレブな友人のお宅で見たなと。
あれこれ繋げてゆくと、此処がどうしてもお店に思えなくて。俄かにそう考えながらも。
やはり強引な彼女たちと向かった先――目の前に広がる光景に、声を失ってしまった私。
プチ・パーティーを催せる広さのそこに、既に会っていた部のメンバーが集結していた。
パーティー・スタイルに身を包んだ男性と女性が談笑し、賑やかな声が室内を彩る中で。
白いテーブルクロスには温かそうな料理が並び、部屋の周囲を美しい花々が囲っている。
レッドカーペッドが敷き詰められた広間では、まさにパーティーが始まろうとしていた。
その主役が修平と私であることは分かっている。けれども、サプライズに頭は回らない。
「だ、…誰が考えてくれた、の?」
反応を楽しむようにニコニコする彼女たちに、どうにか開口が出来たものの拙い言葉だ。
「ん?言い出したのはリヒトだけど、皆がそれぞれ協力してくれたのよ。
せっかくシュウが大事な彼女連れて来たんだもん。お祝いしないテは無いでしょ?」
“因みにリィと私が拉致役でぇ、リリィがスタイリング役なの”とウインクしたジェン。
「そうよー。シュウはね、今でも私たちのメンバーだもの――もちろん、マホもよ」
「…リリィ、」
「その前に私とはBFFよ、ねっ?」
2人と話していた中へ続々と、私たちの周りを取り囲むようにやって来た部のメンバー。
キュートよと言われながら何人かと行ったハグに、背後からはジェンの不満が聞こえる。
“結婚式前だしね。今日は婚約パーティーにしたんだ”とか、様ざまな声色に包まれて。
言葉にならないという、ふわふわした気持ちはこういう時を示すのだと知った気がする。

