その光景に偽りは何もない。クスクス笑っているとジェンと目が合って、頷いてくれた。
車を乗って来たというチーフが取りに行く間、修平は携帯に連絡が入ったため連絡中だ。
ゆったりしたソファで残された私とジェンといえば、すっかり打ち解けて談話中である。
「マホ、そのリングってシュウから?」
「あ、うん」
「やだー可愛い!まあシュウはデレデレだけど」
「でっ、デレデレ!?」
「してるしてる。マホのコトだけは彼、いつもベタベタに甘いわ。
倦怠期すら通り越えた私たちからすると、貴方たちが新鮮に映るくらいね」
「新鮮って…、人を野菜みたいに。そう言うジェンはどうなのよ?」
「そうねぇ…、フレッシュ感は無縁のカップルね」
ジェンはナースとして働いており、同棲していながら顔を合わせない日々が普通らしい。
確かに此方の休暇制度は日本よりも整っているけれど、特殊な職業の場合は例外だろう。
ひとつ年上な彼女の右手薬指もリングが填まっているものの、それは恋人としての証で。
エンゲージまたはマリッジリングが左手に填められる、“その時”を待っているとか――
「まあ、色々言ってもリィのことは愛しているし、一番に大切な人よ。
このまま“婚姻関係”を結ばずに居るのも良いなって、時々考えたりもね」
「ジェンとチーフは、付き合ってどれくらいなの?」
「あ、明後日でちょうど9年だ――記念日を忘れると、リィが怒るのよ」
閃いたように言った彼女に、“おめでとう”を告げれば“それはアナタよ”と返される。
そして隣り合い座っている為、またしてもぎゅーっと強く何度目かのハグが待っていた。
満足したのか解放してくれたところで、グリーンの瞳がジッと私を真っ直ぐ捉えて来る。
「ねえ、マホがシュウを好きになったきっかけは何?」
「え?うーん…、人としても上司としてもすごく尊敬していて、大好きなんだけどね。きっかけとか理由は、未だに分からないかなぁ。
でも愛して守りたい、と思うのは彼だけよ――出会えたことに感謝してる」
「ふふっ、2人のBFFとしてちょっと安心した」
真剣な面持ちから破顔した彼女はやはり美人で、チーフから心底愛されていると分かる。
※BFF(Best Friend Foreverの意味)

