その言葉を待っていました、と言わんばかりにニヤリと口角を上げて笑ったのはチーフ。
「面白くないのヤだもん」
「…だもんって、」
「修ちゃんのその表情(かお)見るの、pleasure(悦び)だしぃ」
このやり取りを見ていると、松岡さんとの場面に何となく重なるけれど、でも違ったり。
それより先ほどから、澄んだグリーンの瞳が向けられながらも無言の状況を打破したい。
ブラウンの髪をウエスト辺りまで流した潔いストレートと高身長がマッチしている女性。
修平とのハグを終えた途端、クールな眼差しに変わったため挨拶のタイミングを逸した。
すると前方から小さく笑う声が届いたことで、その理由を探るようにして視線を移す私。
「ジェン、その顔は怖いって」
「あら失礼ね。我慢してたのよ?キュートねぇ、ジャパニーズ・レディは」
修平の言葉に眉根を寄せたジェンがこちらに向き直ると、すっかり笑顔へ変わっている。
「へ?ええ、と?」
「ジェンって呼んでね。よろしくマホ!」
“ずっと会いたかったのよ”と言われたと同時、修平の時より激しいハグが待っていた。
「出たよ、ヘンタイ思考」
「リィに言われたくないわ。フィギュアなんてイミテーションを集めてるのは誰よ?
それと比べて、生身の子を愛でる私の思考は正しいわ。ねーマホ?」
“ちっちゃいお人形ね!”となおも解放してくれないジェンの強烈さに、ただただ苦笑。
それにチーフがフィギュアのコレクターという、驚きの情報まで知って反応も出来ない。
「ジェン、そろそろ返してくれる?」
「ちょ、修平!」
後方からウエスト部分へと手が回った瞬間。安堵する香りと声色に包まれてホッとした。
憤慨するジェンを軽快に笑う大神チーフの姿に、溜め息を吐く修平から関係図が見える。

