エリートな貴方との軌跡



捕まえたタクシーに乗り込むまで見送ってくれたダンに、手を振ってさよならをすると。



十分も経たないほどで滞在先のペニンシュラへ到着し、彼と2人でエレベーターに乗る。


「待ち合わせ場所まで20分くらい掛かるけど、30分で準備は大丈夫?」


「もちろん!テキトーが取り柄だもん」


チラリと腕時計へ視線を落とした彼に尋ねられて、おどけたのはそれが事実であるため。



サロンでヘアアレンジやメーク・アップをお願いしていれば、それこそ半日仕事だろう。



割とパーティー事の準備には慣れている。何より職業柄、時間勝負な環境で育ってきた。



目的階で停止したエレベーターを降りながら笑うと、静かなフロアを2人で歩いて行く。



すっかり憶えたルームナンバーのドアを解錠し、両手いっぱいの荷物とともに入室する。


「じゃあ電話する」


「うん、ありがと」


ドレス類の入ったショップ袋をソファへと置いた修平は踵を返し、すぐ退出して行った。



念の為ロックを確認してからすぐ、豪快にスーツを脱ぎ捨ててバスルームへと向かう私。



リタッチよりオフする方が早いので、メイクごとササッとシャワーで流して綺麗にした。



修平みたいに“カラスの行水”でシャワーを終え、バスローブ姿でドレッサー前に座る。



化粧水や美容液などで肌を潤した後、ポタポタと落ちる滴をドライヤーで素早く乾かす。



こうすれば肌への浸透時間を待つ必要もなくて、何かと同時進行できるからムダが無い。



湿り気のある程度でドライヤーを一旦止め、ヘア美容液を毛先中心に全体に馴染ませた。



手についたヘア美容液を綺麗にするため手を洗ってから、いよいよメイクに取り掛かる。



時間を考慮してBBクリームを顔全体に馴染ませ、上からサッとコンシーラーをつけた。



それは長年愛用している通称、ラディ。カバー力より光と艶感で肌を綺麗に見せる品だ。



テカリを抑える為のパウダーは、パーリィ感強めながら粒子の細かいパウダーをつけた。



これでBBクリームの色の濃さを中和する上、薄暗い中でも肌を艶やかにみせてくれる。