ちなみに彼が海外専用で愛用中の携帯は、日本より海外で浸透しているブラックベリー。
手のひらサイズのブラック色がシンプルなそれは、彼いわくハイスペックで役立つそう。
ちなみに私は瑞穂の勧めでiPhoneに乗り換えたものの、使い慣れているとは言えない。
「もしもし――ああ、もう疲れたって言ってるよ。…フッ、それは否定しないけど」
穏やかな第一声を響かせると、暫くぶりにOFFで2人とのやり取りを楽しんでいるよう。
時おりダークグレイの瞳をこちらへ向け、私に目配せしながら微笑みかけてくれるから。
ふと垣間見える優しさがくすぐったくて。さらに会話もコミカルで笑みが零れてしまう。
「ところで――マンションにコーヒーミルってある?
ん?ああ、…真帆がもう“松岡に淹れるの面倒”だって」
「なっ、…修平ちがうでしょ!そんなこと言わないし…!」
自然すぎるジョークを言う彼に大声で否定したものの、しまったと気づいてももう遅い。
「聞こえたか?――はいはい、じゃあ代わるよ。…天然由来の小悪魔にね」
今ごろ閉口する私を見ながら綺麗にクスクスと笑った修平から、はいと手渡された携帯。
「やっぱり、可愛い妹のツンデレ具合に萌えー…ってぇ、」
“アホ発言するごとに1発ね”
「うーわー、お姉さまプレイに積極的」
“違うっつーの!このド変態!”
「んー、俺としてはM側はねぇ」
“そういう話じゃないわ、聞け!”
未だ先ほどのムードは変わっておらず、相も変わらずな2人の漫才まがいの会話に笑う。
「――で、真帆ちゃん。肝心のコーヒー豆は挽いて来て貰えるかな?
家はベトナムコーヒー・メーカーはあっても、ミルは無いんだよねぇ」
「ベトナムコーヒー!?」
「そうそう。料理キライなお姉さまがね、使い方も知らないクセに買って来たのよ。
まさに宝の持ち腐れ――で棚の隅で眠ってるけど。まあ俺は会社で絶品コーヒー飲めるしぃ」
絵美さんの憤慨する声音に包まれながら、“今後もよろしく妹ちゃん”と言う松岡さん。

