カウンター越しに眺めていると、ダンをコーヒーのプロだと言った修平に頷き感心する。
東京と名古屋で利用するお店も評判高いけれど、彼のコーヒーへのこだわりもまた凄い。
生豆の温度と湿度管理は元より、年に数回は世界の生産地を回るというのだから相当だ。
「先月はエルサルバドルまで、ちょっくら行ってたよ」
「エルサルバドルって南米の!?
ちょっくらって…、あまり安全とは言えないですよね?」
「おっ、マホ知ってるのか?」
「うーん…父の仕事柄、少しだけ」
話をしつつもその手を休めないダンに頷けば、ふと青い目が不思議そうにこちらへ向く。
「仕事柄?」
「ああ彼女のお父さんは、外交官だから」
「――シュウの父さんでもあるだろ」
「…細かいところに」
「ったく、照れやがって。なあマホ?」
「ふふっ、そうですね」
「…真帆も言う?」
ニヤニヤ笑うダンに賛同する私に溜息を吐いた修平が、どことなく可愛く見えてしまう。
シカゴで彼は良い意味で変わることなく、日々を生き抜いていたと感じる度に嬉しくて。
「はいよ、お待たせ」
暫くして、カチャリと手前から出されたコーヒー・カップはシンプルなホワイトだった。
確かにブランドの柄カップも好きだけれど、何だかその無骨さが味の自信さえ窺わせる。
「すっごくいい香り!」
「出た、匂いフェチ」
「…コーヒーの香りフェチなの!じゃあ、頂きます、…美味しい!」
「そりゃ良かった!」
一口飲めばダンの人柄が如実に表れた、優しくてでも拘りある絶品コーヒーに感動する。

