エリートな貴方との軌跡



だけれど、それもほんの一瞬――初老の男性のグリーンの眼がとても優しかったからだ。


「――わしは店主のDaniel(ダニエル)だ。ダンって呼んでくれ」


「はい、ありがとうございます。それと初めまして、私はマホです」


目を細めてニッコリ笑って男性から差し出された、その大きな手を握り返して挨拶する。


「マホ、…マホそうか、君がマホか」


「…は、はぁ?」


なぜかブツブツと私の名前を連呼し、何かに合点のいったらしいダンは修平の顔を見た。


「この子が例のだな?」


「もちろん。言ってた通りだろ?」


「フハハッ、まったく!」


ダンはニヤニヤしながら尋ねたものの、それを一切構わず肯定する彼に大笑いを始めた。



この状況に疑問符が付き纏うのは私のみだけれど、それ以上に嬉しさが取り巻いていた。



――ほんのりシカゴ時代の足跡を辿らせて貰って。彼の心中で私の存在があったのだと。



以前、大神チーフに少しだけ聞いて、そして飲ませて頂いたコーヒーはこのお店の品で。



世界各国のコーヒー生豆をその人の好みに焙煎し、それをカフェで頂いたり購入出来る。



店内を埋め尽くすほどの種類と量に、コーヒー党の彼が足しげく通っていたのも納得だ。



するとダンがカウンターへ戻るなり、数ある中からひとつの選んで生豆を焙煎し始めた。


「もちろん飲んでくだろ?」


「言う前に作ってくれてるじゃん」


「当たり前だ、誰が飲まずに帰すか」


「それはサンキュ――真帆、一緒でOK?」


「うん、楽しみ!」


此方を向いてニヤリ口元を緩めるダンに、苦笑した彼がカウンター席につくと私も続く。