そのあとで店員さんお見立てのストールやアクセサリーを合わせて、いざ会計の時には。
私が財布を出すより早く、“プレゼント”と言ってクレジットカードで支払ってくれた。
誕生日でもないから腑に落ちないものはあるけれど、こういう時は素直に喜んでしまう。
“でも”と躊躇うより、“ありがとう”と言われた方が何倍も嬉しいと知っているから。
スーツに着替えた私は、センス抜群な店員さんに見送られて彼とともに店をあとにした。
自分で持つと言いたかったけれど、ドレス類が包まれたショップ袋は意外と重量がある。
それも当たり前のように肩へ提げてくれた修平が、ふと自らの腕時計へと視線を落とす。
「ねえ、時間は大丈夫?」
「ああ待ち合わせは、ジェンの都合で2時間後――そろそろホテルに、」
「え、修平は見ないの?」
「ああ、また今度な」
「だめ!」
「――駄目って何が?」
まるで駄々を捏ねる子供へ質すように、穏やかな口調を響かせる姿勢は大人だと思うが。
「もっと、…修平が見て来た街並みを教えて?」
常日ごろ多忙を極めるゆえに、スーツさえオーダーした品を自宅へ届けて貰うばかりで。
こうして街中を歩ける機会も少ないのだから、折角のチャンスを無駄にして欲しくない。
「…分かった――ちょっとだけ寄って良い?」
「うん!」
すると小さく頷いて尋ね返してくれる彼に、思わず力が入ってコクコク頷いてしまった。
“真帆ちゃんは譲らないしな”と破顔されながら、2人で夕暮れのシカゴに溶けて行く。
仕事の話がいっさい出ず、彼の目的地まで向かう時間がひどく贅沢なものに感じられる。

