ドアを開けた先で待機して下さっていた女性が、私の回りを一周してシフォンを直して。
“お客様は華奢だからとてもお似合いだわ”と、ニコリと笑顔を見せたからホッとした。
「パンプスもそれでピッタリね」と愛用靴へ目を向けたから、私も笑って頷いて見せる。
お仕事用のセルジオ・ロッシだけれど、シンプルな黒ハイヒールがドレスとピッタリだ。
「赤のパーティー・バッグを持って来たから、それを使いたいんです。
でも、このドレスに合うアクセサリーとストールをお願い出来ますか?」
“靴はこれが”などと無理に勧めて来ない彼女の接遇に、親近感と高感度が増すばかり。
「ええもちろん、すぐに探しますわ。…オススメはたくさんあるのよ?」
「うん――本当は私ね、見せてくれたドレスも店内の雰囲気も全部、惚れちゃったの」
「まあ嬉しい――その間に素敵な彼に見せて来たらどうかしら?」
“ほら早く”とウインクされ笑って頷くと、ドキドキしながらひとりで店内へ戻った私。
コツコツ鳴り響くパンプス音が逸る鼓動も押し上げる中で、捉えたソファに座る彼の姿。
「お待たせ――どう、かな?」
その場へ足早へ向かった私は、立ち上がった彼の瞳に見つめられることが気恥ずかしい。
「――可愛い、…いや綺麗だよ」
「あ、ありがとう、」
するとフッと破顔させた修平の最高に値する評価が嬉しすぎて、つい顔が緩んでしまう。
暫しダークグレイの瞳と見つめ合っていた最中、腰元を彼の方へグッと引き寄せられる。
そして耳元へ彼の吐息を感じた刹那。“――脱がせたくなる”と囁かれては紅潮する頬。
「い、今はダメ、」
「フッ…、お楽しみは“アト”って事か、」
「知らない!」
この笑みを見せられては、たとえ何年付き合っていようが太刀打ち出来ないのが彼だ…。

