時おり見せてくれる拗ねた表情も、また愛しいと思ってしまうのは私が修平バカだから。



どうしてみても離れたくないし、こんなに愛されていて良いのかと感じるほど幸せだ…。



「――リヒトうるさい」


「ん?ジョシュちゃん嫉妬か?」


修平に抱き寄せられて聞こえたやり取りは、ジョシュアの不機嫌具合を計るには十分で。


「その呼び方するなって言ったじゃん」


「突っ掛かるトコがガキだ」


そんなジョシュアに構わず、彼をからかってはクツクツと愉快そうな大神チーフの声色。


「うるさいな…。オレもう帰るから」


「ジョシュア、待って!」


私はそっと修平から距離を分かつと、白衣姿で背を向けている彼を呼び止めてしまった。



それに応じてくれた彼がコチラを振り向けば、いつもクールな碧眼も怒りの色が窺える。


「なに?」


「あ、のね?…わ、たし」


「ストップ、」


「・・・へ?」


呼び止めたものの、いざ尋ねられて言葉に困る私を制したのは他でもないジョシュアだ。



その強い言い方に目をパチクリさせれば、不機嫌な表情をゆるく破顔させて見据える彼。


「言いたいコトなら分かってるよ。

固意地張った今のオレじゃ、その男に敵わないってことも。今のスタンスで進めてても変われないってこともね。

なんか…色々、肩の力抜けたかも――じゃあね、マホ」


“I owe you one.(借りが出来たよ)”と、最後に加えるあたりはジョシュアらしい。


「うん、またね」


それに笑えるようになれた私も今回、彼にすごく学ばせて貰ったのだと改めて感じた…。