その恥ずかしさとパニックから、瞳からは生理的な涙がポロポロと零れ落ちてしまった。



感情起伏が激しい私はどうしても、動揺すると涙が出てしまうトコロは相も変わらず…。



スーツのポケットに入っているハンカチで涙を拭うと、コツコツ近づいて来た革靴の音。



素早く感じられるその音に目を向けた瞬間、ふわりと漂う大好きな香りと腕で包まれた。



トクン、トクンと規則的に感じる修平の胸の鼓動が、またしても安心感を与えてくれる。


「…大神、」


「あー、はいはい分かりましたよ。

どこまでも秘密主義で日本人感覚で恥ずかしがりな修ちゃんだもんね。

要するに“オマエら邪魔だ、さっさと出てけ”って言いたいんだろ?」


「…前置き長いだろ、それ」


頭上で響く彼の声色は呆れているというよりも、大神チーフの饒舌さに敵わないようだ。



「あれ、ここで不満言う?――真帆ちゃんからの熱ーい告白を聞かせてやったのは…」


「ああ分かった!…で、見返りは何だ?」


その普段の修平をアッサリ崩すやり取りが可笑しくて、思わずクスクスと笑ってしまう。



「今度、真帆ちゃんとデートしたい」


「えっ、」

「却下」


そんな私の頭を撫でて要求を呑んだと思えば、大神チーフの発言にあっさりNOを出す。



「ふーん…、修ちゃん冷たいなぁ。

“その続き”が――修ちゃんと俺とジェンで食事デートしたい、でも却下するんだ?」


「…俺もジェンに言おうか?――リヒトが部下をデートに誘ったって」


「うーわぁ、修ちゃんヤラシイ性格してるー」


「オマエにそのまま返す」


私の背中に腕を回したままで繰り広げられる口撃に、涙の理由は入れ替わってしまった。