“どうしたの?”と再び声を掛けたものの、無反応で突き進む背中は威圧感たっぷりで。



独壇場と化したことで機嫌を損ねてしまった、と謝るために私もあわてて席を立ったが。



当然それを待たずして大きな手は、ガチャリとドアノブに手を掛けて盛大に開け放った。


「――で、聞いてたんでしょ?」


「・・・は?」


予想と大きくかけ離れたジョシュアの発言に、その場で間の抜けた声を漏らしたのは私。



「…バレちゃった?」


「その足音、何年聞いてると思ってんの?」


冷めたジョシュアに“やらしい”と笑いながら姿を見せたのは、何と大神チーフであり。



「でもなぁ、…ラブい愛の告白にドキドキした――ねえ修ちゃん?」


「…大神、」


「ん?修ちゃん、感無量で言葉にもならないって?」


ジョシュアの背中がスッと横へズレたと同時。見覚えあるスーツ姿と声色までもが響く。



声にならない声がまるで空気を噛むように、口を何度もパクパクしながらその姿を見た。



ダークグレイの瞳で此方を優しく捉えながら、その口元を大きな手で覆っている修平だ。



話した直後から羞恥が走っていたというのに、…本人に聞かれていたことで頬が熱くて。



咄嗟に彼から目を逸らした私は顔を覆って狼狽しながら、どこか穴を掘って埋まりたい。



「ほらぁ、何か言うことナイの?」


「…オマエ、面白がってるだろ」


「当然――ここは自由の国なんだから、もっとラブに大らかで良いのになー。

美女の想いに答える、精力の漲った修ちゃんの行く末は気になるしねぇ」


“修ちゃんイジるの楽しいー”とチーフの軽快な声音に、誰かが呆れて溜め息を吐いた。