その碧眼の眼差しは何処か苛立っていて、受話器をデスクに戻す仕草からも見て取れる。



“さよなら”の一言なく、別支社の上司との電話を終える時点で不快に思えてならない。



「松岡さん、何て言われたの?」


「…別に、」


「ねえ?」


「・・・」


こちらの問い掛けにもぷいと背を向け、自身のデスクから幾つか資料を引っ張り出した。



明らかに無視されたというか、話しかけるなという雰囲気を纏い始めているのだけれど。



何も口にする事なく、再び試作に取り掛かったジョシュアの態度は失礼でないだろうか?



思ったことは内に秘めておけない、直結型タイプである私はふつふつ怒りを覚えていた。



その大きな背中を覆っている白衣を、クイッと引っ張ってこちらへと向くように促せば。



「ちょっと、ジョシュア!」


「マホ、静かにしてくれる?」


「いやよ――何なの一体?」


思いきり見上げたことでようやく不機嫌な碧眼と目が合い、冷たい声で尋ねてしまった。



「なにが?」


「何がじゃないわ!松岡さんはきちんと情報を授けて下さったでしょう?

それなのにどうして、“ありがとう”の一言も言わなかったの?とても失礼に感じたわ。

加えて私が、貴方の用件後に松岡さんとお話があったとすれば…、さっきの確認なしでの行動はどう思うの?」


要件が終わっていたことは分かっていたけれど、最後にお礼くらいはさせて欲しかった。



これが本音だけれど、それは二の次だった。というのも、真剣に怒っているというのに。



何がおかしいのだろうか、クツクツ小気味悪く笑っているジョシュアに失望させられた。