エリートな貴方との軌跡



賑やかな街並みの中で信号停止した、ダークグレイ色のレクサス・IS350。



フェアレディーZを手放して本社へ向かった彼が、帰国直後に購入したモノだ。





「…俺の方が、既に限界――」


「…ふっ、んっ…」


革張りシートの助手席に手を掛けたまま、容易く唇へと到達されれば。



素早く角度を変えて、幾度となく優しいキスを落とされてしまうから。



ムーディーなBGMと共鳴して、チュッ、チュッとリップ音が木霊した…――





「…取り敢えず、我慢出来る?」


「っ…、大丈夫…!」


キスを終えてもなお、近距離で私をジッと捉える彼に必死で頷きながらも。



信号待ちという危うい状況は、さらに恥ずかしさを覚えさせていく…。




「真帆ちゃん、真っ赤だけど…?」


「もぉー!」


「エリート係長…、その裏は天然小悪魔かな…――」


ネオンの光が照らしだすのは、運転を再開させた人のアンニュイな表情で。




「…修平、大好き…」


「…俺は真帆以上に――」



車の色と同じダークグレイの瞳の彼を、無性に呼び捨てしたくなったの・・・