再び背を向けて薬品に注視する、ジョシュアが手がける試作品は流石の難解品である。
初日に行っていた、支社より差し戻した依頼品はとうに片づけたというから恐るべき。
今回の開発品も数日で片づけると豪語したものの、どうやらソレも口先ではないようだ。
薬品の化合量を間違えれば、まったく使いものにならない。それぞれ調整が大変だろう。
きっと、いや間違いなく支社で扱えるのは、伊藤さんを除いて修平と松岡さんくらい――
松岡さんの場合は他の課長を越えた知識を備えているが、それを公言していないだけで。
今回の出張もまた、ジョシュアを打ち負かしそうな彼が来るべきだったと思えてしまう。
本社勤務である彼と私の能力や知識では、まったく比に値しないことは明白だけれども。
「…ねえジョシュア。お邪魔して悪いけれど」
「マホは大歓迎――で、あるの?良い考えが」
此方へ視線を移したブルーアイズは愉快そうに見えるけれど、敢えて気づかないフリだ。
時おり弱気になるものの、吐き出す弱さを兼ね備えていない私はある資料を差し向けた。
「その薬品――能力ある貴方が扱うには良いけれど、他者ではリスクが高いと思うの。
今後を見越していけば、確かにスピードも大切だけれど安全性を選択するのは大切よね?
それで…、類似品で日本の製薬会社で開発した新薬があるの――これとか、どう思う?」
意外なことに私の話に小さく頷きながら、その日本から持参した資料をペラペラ捲る彼。
「ふーん…、それは知らなかった。
ねえマホ、これ直ぐに取り寄せたいんだけど。ほら、運良くシカゴに支社あるし」
「あ、そうだね…、それなら、一度日本支社へ連絡しても良い?
その会社の営業担当と仲の良い人が居てね、手筈を踏むより色々と早いと思うの」
「んー、分かった。…なんかマホって、妙に人のペース乱すよね」
「はいはい、お褒めのお言葉ありがとう」
物言いはイチイチ失礼な彼に苦笑しつつ、日本支社のある人物へ連絡を取ることにした。

