エリートな貴方との軌跡



“昨日は物見遊山で当然だが、一日で状況把握は出来ただろう?”という意味合いだ。



表面はニコニコ笑っているようで、何を考えているか掴めないところは賢い人ならでは。



今の問い…もとい脅しをかけて来た、強い眼差しを直視をすれば怯んでしまうそうだ。



とはいえ黒いレンズ一枚を隔てているから、なおさら考えが読めない点は不安に繋がる。



「かしこまりました、…よろしくお願いいたします」


だけれどプレッシャーが掛かる時ほど、素早いレスポンスである事は社会人の大前提。



ココで逃げたり、はたまたうろたえたりすれば、其処で直ぐに見限られてしまうもの。



そう…最善を尽くすには、まず彼の笑顔に負けないほどの笑みを返すことから始まる。



こうして厳しいとも思える状況下に置かれることは、働く者として幸せなのだから…。



「なるほど。じゃああとで」


「はい」


どう判断されたかは分からないけれど、小さく頷いて去った彼の姿を一先ず見送った。



スタイルだけで人を判断するのは大間違い――この言葉も、チーフにはピタリと填まる。



その後リリィの案内でとある会議室へ向かうと、部内の役職者らが既に集まっていた。




「――では、今後の予定と現時点での各状況をお知らせください」


直ぐに始まったミーティングにチーフは不在らしく、ジョシュアがそれを仕切るようだ。



年齢的にはジョシュアが最年少だというのに…、デキる男なのだろうかと疑念が募る。



下座の椅子へ腰を落ち着けた私は、各々(おのおの)の進捗状況の報告に耳を傾けつつ。



センターで声を張り上げる真剣な碧眼の彼には、次々と生じる不可解さを感じていた。