フゥ…と小さく溜め息を吐こうが、全く気にしていないジョシュアはつわものだろう。
大神チーフを意識しているのは変わらないけれど、彼は苦手な人のカテゴライズだ。
律儀にもドアを閉めてくれた彼が乗り込んだのを待ってから、シートベルトを締める。
そうしてエンジンを始動させたジョシュアに視線を送り、正面へ目を向けてしまうと。
「マホって結構、場数踏んでる?」
「どういう意味…?」
「あーあ、無自覚って怖いな」
見た目はピュアなのに、なんて大笑いしながら、プリウスを運転する彼こそどうなの?
だけれど、敢えて無言を貫いていれば。ササーッと混雑する私道を走り抜けて行く車。
「ね、言ったでしょ?ラッシュをナメたらダメって」
「本当ですね、…すみません」
何となく気に障る嫌味を、もう受け流す方が得策なのだろうと各工場へ目を向けていた。
「どーしてバイリンガルなのに謝るワケ?
ロンドンで育ったキュート・レディなのに、日本人の悪習沁みてるよ」
「…どういう意味ですか」
やはり気を抜いてはいけないのか、くつくつと笑うジョシュアに声色が変化してしまう。
「マホは謝りすぎだよ。コッチが困るくらい」
「日本の美徳ですから、気にしないで下さい」
「プッ、ハハハ…!」
「もうっ、何なのよ!」
運転をしながら愉快に口元を緩めたから、ついつい声を荒げてキッと睨みつける私。
ああ子供染みていると頭では分かっているのに、イチイチ反応するとは情けないわ…。

